もう一つの道


【経済学者たちの日米開戦】
昭和16年末の大東亜戦争開戦まで陸軍は何度も国力判断を冷静に行っていた事実。

秋丸機関も冷静に他国の経済情勢や日本の輸入依存割合など数字を出し資料としてまとめ、”これ以上戦争を広げたらもう日本の戦力はなくなるのみならず、生活力さえなくなるようになるだろう”と結論を出し、”物的国力は開戦後第一年に80〜75%に低下し、第二年はそれよりさらに70〜65%低下する” と、ド素人でも開戦は絶望的だとわかるよう客観的事実から冷静に分析し説明していた。

これらの事実は、数字も含め全て雑誌や新聞にも公表されていて国民の誰もが知っている常識的な事だった。

秋丸機関の設立を命じた岩畔豪雄氏は、アメリカの経済調査報告書の数字を元に、
・第一案/対米開戦論
 (一時的勝利できても長期的には勝利は困難)
・第二案/日米国交回復論
 (交渉妥結の為に仏印と中国から全面撤退する必要有。日本国家存立の為には第一案より優良)
・第三案/情勢観望論
 (盛り上がっている主戦熱に対抗出来ずクーデターや内乱により主戦派が台頭し対米戦争となる公算大)
と発表したが、陸海軍でこの話を真剣に受け止めたのは二人だけだったという。。。この後、岩畔氏は事実上左遷される。

総力戦研究所の総括的結論でも、”対米開戦は日本の敗北となる” であった。

本 開戦

こういった研究は無数にあって、英米と日本の巨大な経済格差、国力の隔絶は数字で公表され一般人も含めた誰もが知る常識だった。故に、秋丸次朗氏が日米の国力比を20対1と説明しても、岩畔豪雄氏が日米の隔絶された国力差を資料を使って説明しても一般常識を改めて説明している、としか受け止められなかったという。


国際資源論の図表にも日米生産力の比較において鉄鋼は10倍、造船造機は4倍以上と公表されていた。が、だからこそ不可能を可能にするのだ!という精神万能主義が大勢をしめ、少しでも数字を言えば、敗北主義だ!と批判を受け、冷静な極々一部を除いて何かにとりつかれたように熱狂的に開戦を謳い突き進んでいった様子がつぶさに描かれている。

このような数字や見通しは国民も含め常識であったのに、何故、開戦という大博打を熱狂的に選択してしまったのか。。。その背景をこの本では、行動経済学のプロスペクト理論と社会心理学を使って理路整然と説明していて非常に面白く仕上がっている。

戦争回避の為のルーズベルト大統領との直接会談を模索した近衛文麿首相は国民世論に圧される形で辞職となり、世論の対米強硬論に合致した東条内閣成立。それでも昭和天皇は対米交渉に力を尽くすよう東条首相に指示を出され、それにより帝国国策遂行要領をいったん白紙にし今後の国策を再検討した。

日米交渉不成功の際、日本の国力が3年後には底を尽くことは確実。3年後の確実な敗北よりも、もしかしたらドイツがイギリスに勝ってアメリカは戦争断念し日本が有利になるかも♪ と不確定要素満載の希望を道標に 国をあげた大博打を行う事に決定。

昭和天皇は「私が主戦論を抑えたらば、陸海に多年錬磨の精鋭なる軍を持ちながら、ムザムザ米国に屈伏するというので、国内の与論は必ず沸騰し、クーデタが起こったであろう」と述べられている。ほとんどの国民が熱狂的に開戦を望んでいた。

河西晃祐氏の言葉が紹介されていた。「もし現在の我々が太平洋戦争開戦に至る歴史から何かを学びえるとすれば、それは~~略~~正しい情報と判断力があれば戦争が回避できるわけではない怖さを、この時のアクターらの行動は示しているといえよう。」 と。

この本の更に面白い所は、同盟国ドイツと日本の戦い方や、せめてのこうするのが必要だったよな、と言う事にも言及してありその後の戦争の流れから問題点など冷静に分析もされており、日米英開戦はどうすれば避けられ、経済学者は何をすべきだったのか等事細かに牧野邦昭教授独自の見解が述べられている。ほー!その手があったか!!と感心した。頭の良い学者様は違うなぁ〜♪ 国を愛するそして特定の思想に偏らない冷静鋭敏な学者様だと思った次第だ。

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